2009年11月12日木曜日

松井秀喜の行方4:キャッシュマンGMの発言、メディア、代理人アーン・テレムの宣伝

日本の新聞もこっちの多くのスポーツサイトでもヤンキースGM、ブライアン・キャッシュマンのこの2日の発言が微妙にまがって受け止められてますね。

「松井は外野手でなくDHとしてのみ考えている」、「ワールドシリーズ/ポストシリーズでどう活躍しようがしまいが選手としての評価は変わらない」

でも、キャッシュマンは昨日こうも言ってますね。「メジャーでも屈指の打点男で、試合の大事な場面で打席に立ってて欲しい選手は松井以外にはそういない。怪我が無ければ活躍する選手でそれがワールドチャンプに結びついた。彼は(レギュラーシーズン)1年間怪我も無くて、それがプレーオフにもつながった」

ワールドシリーズMVPだからどうって言うわけでなく、松井を非常に評価してると取るべきですね。
それと同時に今後、松井との交渉へ向けて代理人などに対して「でも、WSのMVPっていうのはサンプルとして少な過ぎるから条件交渉にプラスにはならないよ」と牽制してるということです。
僕もプレーオフで活躍しようが松井への評価はほとんど変わらないとプレーオフ前から書いてましたが、そう言う事です。これも書きましたが、WSの活躍はあくまで松井が出来る事の再認識でしかない、と。

で、DHでしかない、と思ってるのは多分事実だと思いますが、これも牽制ですよね。代理人へもそうですし、他チームへもね。松井のヒザを本当に分かってるのはヤンキースです。これからもし他チームと松井の交渉が本格化して、メディカルレコード等を見せたって、何年もこのヒザのことを相手にしてきたのはヤンキースのみです。
ほとんどのチームが松井はほぼフルタイムのDHだと判断してると思いますが、(仮に表向きになんて言おうと)キャッシュマンがはっきり言うのはさらにそう思わせ、松井へのマーケット(交渉相手)を減らす事にもなります。

ヤンキースとしては出て行って欲しくないけれど、長期契約も高い年俸も払いたくないわけです。松井の価値に見合い、ヤンキースとして将来を見据えた時に払える最大はオファーするとは思いますけど、他に交渉相手が少なければ少ないほど市場の原理で安くなる可能性が高いわけですから。

また、ヤンキースとしては松井がチームに残りたくても自分の安売りはしないことは身を持って分かってます。2003年に来て初めの3年契約終了後、相思相愛、再契約しない事は考えられない状況の2005年オフの際も、松井自身もかなり関わって最大限の評価の条件を出す様に交渉したと言われてます。
今回だってヤンキースからオファーがあれば飛びつくような発言は松井側からも出てないですし、キャッシュマンとしても交渉の準備をしてるととってもいいと思いますね。
前回との違いはヤンキースとしては自分らの条件で松井が納得しないのなら、Move On(次に行く)する気でいる可能性がかなり高いことですね。

ちなみに、このブログでも一昨年のヨハン・サンタナのトレードやその前の松坂大輔のボストンとの交渉の時も書いた様にこういうメディアに流れる情報というのは、代理人や球団側のPosturing(交渉を有利にするための造られた態度)の可能性が高いですね。
松井側の言う、守備のチャンスなんてももちろんそういう意図はあります。お互いバカでないですからそんなに簡単に影響はないですけどね。

このキャッシュマンや例えばスコット・ボラス代理人の「デーモンはジーターみたいなもんだ、4、5年契約は当然」という発言のように顔を出して言うケースばかりでなく、記者が特ダネ、裏情報として球団の関係者から出て来たとしてソースが不明な場合もよくあります。
そういうのもPosturingの一つでメディアを使ってるわけです。何か理由がなければ機密である交渉中にそう簡単に出ない情報ですからね。もしくは記者の勝手な予想やでっちあげの時もあります。
今後そういう状況が出て来たらそれを注意してニュースをチェックするといいでしょう。

で、そのPosturingというよりも完全な宣伝に近いですが、松井の代理人のアーン・テレムがアメリカの大きなウェブニュースサイトのハフィントン・ポストに松井の記事を寄稿しています。
こういう形の宣伝も珍しいです。
松井にどういう価値があるかを何点か挙げ、褒めちぎって、松井がNYを如何に愛し、ファンを結束させたか、そして微妙に他のチームに行くぞおっと脅してます。

http://www.huffingtonpost.com/arn-tellem/hideki-matsui-an-ageless_b_351519.html

この記事の大きな部分がこの前ちょっと書いたNYにある日本のカレー屋のゴーゴーカレーなのにびっくりしました。実はNYオープンとかを手伝ったんで。
松井の契約への宣伝だけでなく、カレーの宣伝を一流代理人がしちゃってるのが笑えます。
実際、カレー屋はWS優勝の次の日は異常なお客さんの数で記録を作る勢い、その翌日もそうだったようです。(ちなみにお客の大半は日本人ではないですよ)

簡単に要約(+意訳ね、いつものように僕の言葉にかなりしてますんで)すると、

ゴーゴーカレーの紹介(特に松井が打った次の日にはクーポン券を配る事や、なぜ55ゴーゴーかなど)をした後に、松井の今年の功績、ワールドシリーズでのMVPが如何にすごかったか、を書いてます。その後は、

松井の活躍(コマツの看板の上にHRを打ったと書きつつw)でのヤンキースの優勝後にヤンキースファンはこのカレー屋に松井を讃えるために集まった。
根上町出身の彼は、世界中から多くの移民がより良い生活を求めて集まる人種のるつぼであるNYでこの偉業を成し遂げたのだった。
野球のチームはふつう街や州の名前がついているが、ニューヨーカーは今まで何度としてきたように、(外国人である)松井を心から賞賛する事で国境の壁を越えたのだった。
今の時代、野球のチーム自体をヒーロー視することはないかもしれないけれど、松井が見せた様に、我々が夢を見ることができ、それに対して議論を交わすこともでき、また単に一緒に感嘆できるような事があり得える、人々の結束の力となるのがチームであり野球というゲームなのだ。

とまあ、ここまではなんだかカッコいい事を書いてます(笑)この後は

松井はFA宣言をして、ヤンキースの将来のプランには松井は含まれてない、すでにベテランのチームに35歳の松井は合わないとスポーツライターは予想する。

ここから再契約への宣伝一辺倒になります。

松井の代理人として私は違った見方をする。
年齢による衰えを知らない松井はまだまだ打てるというのを証明しただけでなく、常にコンスタントにそして沈着の中で打ち続けられるというのを世界に見せた。
松井の成績を挙げつつ、試合終盤に強かったむかーしのヤンキー、トミー・ヘンリック(あだ名がOld Reliableだからね。"常に頼れる"ってとこですかね。こういう場合のOldってのは全くNegativeではないですよ。)とポール・オニールのプロ意識を合わせた様な完全な選手で、野球の試合の全ての面に貢献する事に誇りを持っている。

松井が如何に日本で人気があり,そのためにスポンサーも増え,テレビ中継も数多くある、と。

日本に松井がヤンキースの名前を売ったのはバスケのヤオ・ミンがNBAを中国に広めたのと同じくらいの事をしたと言っても決して過言ではない。
そして松井には成績には表れない美徳が他にもあるのだ。一流アスリートが何にも敬意を持たないのが日常茶飯事の時代だが、松井は常に模範となる生活をしている。
2003年の1月、NYについて一番の初めに彼がリクエストしたのは追悼をしたいからワールド・トレード・センター跡地に連れて行って欲しいという事だった。
彼は「これが正しい当然のこと」という理由だけで、派手にメディアなどに知らせずに行ったのだった。2005年のインドネシアの津波被害のあとも自分のポケットから50万ドルをユニセフに払うなど、自分の希有な才能が与えた特別な立場を理解し,どれだけそれを他の人のために有効に使えるかを理解した、非常に珍しいスーパースターの一人なのだ。

松井はNYを愛している。このブロンクスで過ごした7年間は今後常に自分の心のなかの「特別な場所」に住み続けるだろうと言う。
日本のカレーのファンへ:ゴジラは何処にいこうが、今後も長い間、クーポン券を出し続けるだろう。

と、まあこんな感じです。

他に行ったるぞ! ヤンキースよ、再契約をしろ!それも長く、そして全て(守備も)ができるんだ!というのが随所に感じられてオモロかったです。

効果があるのかは知りませんが、ファンはさらにファンになりそうですね。

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