2009年11月8日日曜日

松井秀喜の行方1:彼の希望、ヤンキースの立場

★ゴジラ
松井としては言うまでもなく、ヤンキースとの再契約が希望です。

・日本
日本へ戻る気は0ですね。日本の記者にもコメントを正式に出してましたが、前から常にそう言ってるようですし、それだけはないでしょう。

・守備
また守りたい、という気持ちは強いようです。守って、走ってが出来てこそ野球選手だというのも本音でしょうね。
一部では一塁でも、なんて話も出てるんですがそれはどうでしょうね。

・年俸等の条件
今まで一番評価をしてくれる、欲しいと思ってくれる球団に行くことを考えると言って来ました。プロは年俸でのみ評価されるものだから、とも。ヤンキースからオファーがあったとしても、それより明らかにいい条件が他チームから来た時が一番面白いですね。

・かってな噂
ホントかどうかは知りませんが、すでに松井側から1年契約でいいし、年俸もディスカウントでいいという事をヤンキースに伝えているという話を聞いたことはあります。一応ヤンキースの関連会社(Legends Hospitality)とマーケティング関係の仕事でそれなりに関わってはいる人からですが、信憑性はあんまりないでしょう。

・NYC
ニューヨークが好きなのは事実でしょうね。もちろんヤンキースにもそうだし、街にも慣れています。便利だし、住むとこもすでにあります。だからちょうどレフトか一塁の補強の予定のメッツはどうか?なんて書いた記者もいます。他にも色々とできればNYから動きたくない理由があるみたいですしね。

★ヤンキース
・松井の能力と限界
ヤンキースとしては松井の打撃はかなり大きいと思ってます。でも、何度も書いてる様にDHでしか現時点では出来ないと判断するしかないのが常識。松井本人も言ってますが証明出来るのは来年のオープン戦、すなわち契約後なわけです。ヤンキースが松井のヒザの本当の状態は一番分かってるわけですから、その辺の間違った判断はしないでしょう。
松井と再契約をしないとなると5、6番の穴をどう埋めるか?というのはかなり難しいというのは分かってますね。
また、NYでこれだけ証明されている選手がいないというのも分かってます。

・DHの固定
捕手のポサダ、このオフは再手術は必要ないらしいけれどA-Rod、そしてジーター、(もしデーモンと再契約をするのなら彼もですが、)年齢の高さや怪我の不安があります。DHは固定せずに持ち回りでベテランの半休養に当てたいのは事実。週7試合あってそのうちの3試合は必ず上記の3人をDHにするとすれば、その3日だけでもフィールドを守れる選手が必要なわけです。

・デーモン
もし、松井かデーモンかだけを単純に考えればデーモンの方がまだ使い勝手があるわけです。守備がうまいわけではないですし、大事な場面で彼の肩の弱さはマイナスですが、デーモンはほぼ毎日でも守備につけるのは事実。
デーモンはヤンキースと再契約はしたいけれど、フェアなディールが欲しいと言ってましたが、勝てる可能性のあるチームからヤンキースよりもいい条件がくればヤンキースがマッチしない限りは戻って来ないということですね。何と言ってもボストンからヤンキースに移籍出来る人ですからねえ(もちろんその時はヤンキースからのオファーが全然よかったんですけどね)。2年かそれ以上を望んでいるとなるとヤンキースは契約をしないでしょう。
もちろん両方とも戻って来ない可能性も十分あります。両方とも戻って来る可能性もちょっとだけあると思います。

・Long Term Payroll Flexibility
核となる選手の年齢が高いのは上に書きましたが、彼らの契約や一塁手マーク・タシェーラ、先発のCC・サバシア、A.J. バーネットら長期契約がかなりかさばって来てます。
そして来オフはジーターとの10年契約が切れます。これも注目ですよ。

http://spreadsheets.google.com/pub?key=p4ew-fwu2XT3cpPRtt9qIGw


ここを見ると分かるようにヤンキースは既に圧倒的に未来の年俸の確約が高くなってます。2013年にすでに確約があるのが95ミリオン、これは30チームのうち18チームの今年の総年俸よりも高いわけです。

・総年俸
ちょっと前から言われてる事ですが、ヤンキースの上層部から総年俸を200ミリオン以下に落とせとGMキャッシュマンは注文されているという話。2009年は金を使わせて貰う代わりに2010年から11年までに総年俸を落とすという条件があるという話。
上記のPayroll Flexibility(総年俸を限界まで使い切らずに余裕を残しておく、もしくは長期的に不良債権になりうる契約を減らすということ)を求める方向にあるのは事実だと思います。
ちなみにPayrollってのは単に全ての選手の年俸を足せば、いいって言う単純な算数ではありません。すごく複雑なものであって簡単に判断の下せるものではなありませんので。

・Next CBA
また2011年後に現在の労使協定が切れて新たなCBA(Collective Bargaining Agreement、労使協定のことね)が話し合われますが、ヤンキースにとって不利な方向に行くのは間違いないはず。戦力均衡が進んだように見えてましたが、やはり一部のチームが金を使えてしまってその方が楽に強いチームができてしまうのは当たり前。利益の分配はそれなりに出来ているので、それはともかく、リーグ全体の活性化がさらなる利益につながるのは事実なので、サラリーキャップとまでは行かないですが、何らかの制約が増えることになるんでしょう。

・補強の優先順位
第1の補強はもう一人の先発のよう。また、打者ならマット・ホリデイ、ジェイソン・ベイが一番のフリーエージェントなのが今年。来季はもっとまともになります。可能性として打者はジョー・マウアー、カール・クロフォード、投手ではロイ・ハラデイ、クリフ・リー、ジョシュ・ベケットなど。

もちろんヤンキースの事なんでホリデイをとりにいってしまう事があるのかもしれませんが、上記のような理由を合わせると今年は長い契約になる打者に手を出す可能性は低そうです。投手も一番がジョン・ラッキーですが、彼との契約もあまり可能性は高くなさそうな状況ではあります。
トレード、そして来季はまだ使えないでしょうがキューバ亡命の160キロ左腕アロルディス・チャプマンとの契約があるかもしれませんね。

・アブレユ、ジアンビと若返り、オースティン・ジャクソンらプロスペクト
昨オフのジアンビはまあ当然、オファーすらなくてもよかったでしょうが、アブレユとは1年契約なら良かったんでないかと思った人も多いでしょう。ヤンキースとしては若返りをしたいのは事実。もう1年なら大丈夫だろうというベテラン選手を早めに切ることに迷いはないでしょう。上のDHを固定したくないのに関連しますが、DHに近い選手を減らしていき、運動能力が高く、若いチームへの移行を目指してます。それで確実に勝てる戦力も同時にキープしていくのは難しいことですけどね。

ヤンキースの野手のトップ・プロスペクトは打つのだけなら超一流になれるはずのDH/捕手のヒースス・モンテロと、なかなかスピードはあるけど、パワーは何処までか微妙な非常にアスレティックな中堅のオースティン・ジャクソン。
19歳のモンテロはヤンキースではDHしか将来がなさそう。再来年がチャンスでしょうか。
22歳のジャクソンはメジャーリーグレベルでセンターとして長くやれるかは微妙で、まだ色々と成長過程。来年から少しずつ構想に入って来る選手。
もちろんプロスペクトを安易に計算に入れる様なことは無く、与えられるチャンスは多くないでしょうから、本人がそれを生かすかどうかです。

・ワールドシリーズMVP、ジョン・ウェッテランド
1996年に18年振りのワールドチャンプになった時のクローザー、ジョン・ウェッテランドは6試合中5試合に登板4セーブを挙げてMVPに。
その年のシーズン中から6、7、8回のあたりに若きマリアーノ・リベラ、そして9回はウェッテランドという強烈なコンビをくんでました。ヤンキースとしてはリベラが後継者になれる確信があり、ウェッテランドは他からの契約が高過ぎるものになるだろうと判断、オファーすらしませんでした。テキサスからの4年23ミリオン(当時としてはクローザー最高年俸)で移籍、実際3、4年目はまあまあのシーズンは送ったけれど、背中の怪我もありでその4年目終了後に33歳にて引退。

はっきり言って状況が違うし、ポジションも違います。参考になると言えばなるし、ならないと言えばなりません。

松井のワールドシリーズMVP獲得というのはプラスなのは当たり前です。ファンからの声は大きくなったし、メディアも取り上げまくってくれました。もちろんそんな外からの声でフロントオフィスの考えは変わりませんが、単に松井という選手がどれだけ力があるかという再認識になったという意味ではプラスでしょう。

・日本のマーケットへの影響、日本からのスポンサー
もし上記の総年俸の上限の話も含め、ビジネス的にもっと利益がでるように、という事がヤンキースにとって大きな問題であるのであれば、松井はお金を持って来る選手であるから悪くはないです。ただ、年俸全てが返って来るほどではないですし、日本でヤンキースというブランドは既に浸透しきったとも言えます。
もちろん、日本で最も人気のある選手の一人が、この活躍の後にオファーもなしで出てくことになれば日本のマーケットへの悪影響はあるとは思います。

・まとめ
上の全てを見ると松井にとって向かい風ばかりではないですね。

ヤンキースで引退まで、なんてことは可能性0と言ってもいいくらいですが、来年の契約というだけであれば、2、3個のことが上手く行けばあると言ってもいいでしょう。
もちろん可能性は低い事には変わりませんし、ヤンキースから複数年オファーというのもあり得ないと思います。

ヤンキースが今オフに大きな野手の補強をしないというのが濃厚な現実で、来年以降のFAやプロスペクトまでのつなぎという意味での1年契約。(デーモンの動向もやはり影響するでしょう。)
さらに週に1、2回でもレフトの守備ができる可能性が十分あると考えるか、少なくとも試してみてもよいと考えれば。もし守れそうにないと考えている場合でも今年とほぼ同じようなアレンジでもう1年行けなくはないと判断すれば。(実際ポサダもA-RodもジーターもDHで休みたいとは思ってないはずですしね)
そしてその時に他チームからいい条件がないか、松井がヤンキース残留にホンキでこだわれば。
というところでしょうか。

あるとすれば1年6〜7ミリオン+出来高でしょうかね。
(もし、ヤンキースが松井の事が本当に必要だと思っている場合、もしくはDHの持ち回りを実はあまり気にしていないというのなら、もしかしたら2年で16ミリオン級、1年+オプション、オプションも条件を満たせば自動的ってこともあるかもですね)

正式にフリーエージェントになるのは11月20日以降。それまではヤンキースが独占交渉権がありますが、それまでに決まるとは思えません。

となると、当然他チームの動向、他のフリーエージェント選手の動向も関わって来ます。
その辺りは次の2つのエントリーで書こうかなと思ってますんで。

どうなるにしろこのオフは注目ですね。

7 件のコメント:

th さんのコメント...

いつも素晴らしい記事をありがとうございます。今後も現地の生の雰囲気を伝えてください。

nao さんのコメント...

こんにちは。私は数年前からMLBを観るようになりました。どうしてもライブで優勝パレードが見たくてネットで検索していたところ、こちらのブログへ辿りつきました。
お陰様で日本時間7日の夜中にライブでパレードを見る事ができました。感謝感謝です!
これからも現地ならではの情報を楽しみにしています。

くらっちまん さんのコメント...

ごぶさたしています。
去就問題・・・ここが一番分かりやすいですね。お忙しい中おつかれさまです。
そして、この問題、難しいですね…私も、松井本人と同じく「I❤NY」タイプですが、
私のところを訪れるファンの中には、「今年みたいに出れるか出れないか・・・毎日心配するのはいやだからヤンキースを出て欲しい!」と言う意見も正直ありましたね。

私はNYYにも愛着が出てきましたし…チームか個人か…常に「両獲り」の気持ちでいた私には難しいところです。

何はともあれ、「今年行き損ねた」新ヤンキースタジアムには、一度行ってみたい。できれば松井がいる場で・・・・
理想と現実の違いは十分理解しており、「契約社会」の現実は受け止めざるを得ないでしょうが、これが偽らざる気持ちです。

Brooklynite(ブルックリナイト) さんのコメント...

thさん
ありがとうございます。少しでも楽しんで頂ければと思います!

naoさん
ライブフィードで見れたとの事、よかったですね!
日本でも何処かのテレビで生でやるのかと思ってました。テレビ局はいっぱいきてましたけどねえ。

くらっちまんさん
多分、どのチームに行っても毎日先発する事はあり得ないでしょうね。それは松井にとってもいい事だと思いますよ。本人だって出たいと思っても今年なんかは無理だったわけだし。

松井が一番気にしてるのはやはり守備もまたやりたいというのだと思いますね。先発の回数はどのチームに行ってもそう変わらないんでないですかねえ。

なんにせよ、またNYで会えるのを心待ちにしてますね!

匿名 さんのコメント...

松井については、契約が切れた事もあり途端に騒がしくなりました。

MLBでの成績はイチローとは遜色あるでしょうが、彼こそNYのプレッシャーに耐える事の出来た日本人メジャーリーガーはいませんでした。
NYに在籍した他の選手――カズオの悲劇的結末は今なお記憶に新しいし、新庄は街に合っていなかった訳ではないが打撃がレギュラーレベルでなかったのでダメでした。

他の選手の場合――イチローはバッティングスタイルなどでチーム、NYメディアと紛争状態になりそう。
(具体的に選手間では、ジーターは大人で、A-RODは敬意を持ちそうだが、ポサダとはケンカする?)
福留は顔と態度で損しそう。
岩村はダメとは言わないが(来る可能性が低いのは承知の上)、松井と較べると・・・

松井の来年は記録イヤーになると、先日読んだ「Number」にありましたが、MLB限定でも150HR、1000hitsが控えている。
日米通算だと、来年早々に落合超え(Healthyなら2500hitsもあり)、500HRの可能性があります。
今年については不満の面もあった(打率の他、もうちょっと2Bも打ってほしかった)ので、健康である事を願うばかりです。

アトム さんのコメント...

こんにちは
いつも拝見しております。

松井秀喜の行方の記事をわたしのブログに訪れる方々にも見て頂きたいのでリンクを貼らせていただきました。
悪しからず宜しく御願いします。

Brooklynite(ブルックリナイト) さんのコメント...

アトムさん

どうぞ、リンクしてくださいね。どのブログかな?

匿名さん

ホントNYでやれるってのはすごい事だと思いますよ。
イチローは結果は出すので大丈夫だとは思いますが、確かにメジャーでは気に入られない事をしてしまう人ですからねえ。
福留の顔(笑)

記録イヤー、たしかにそうですよね。アメリカの何処かで起こるのは間違いないですけどねえ。
今年の成績については次で少し書こうとは思ってますが、打率、二塁打ともに仕方なかった気はしますね。